三重県にある「マリーナ河芸」に拠点を置く株式会社ダイイチは、伊勢湾を望むロケーションにあり、ボートの保管やメンテナンスを中心に、釣りやクルージングなど年間を通じて多くのマリンレジャーをサポートしている。同グループでは免許講習や船の販売、レンタルボート事業なども展開しており、幅広い分野で“海と人”をつなぐ活動を行っている。
今回は、マリン業界に新しい風を吹き込むマリーナ河芸の若手スタッフ3名にインタビュー。彼らはどんな想いでこの仕事に向き合っているのか。日々の業務や仕事のやりがい、そしてこの業界で働く魅力について、話を聞いた。
前畑 州さん(整備士/勤続1年半)

マリーナという場所に惹かれて
――就職先を検討する際、様々な選択肢がある中で、マリン業界を選んだきっかけを教えてください。
前畑:もともとマリン業界に絞って探していたわけではありませんでしたが、小さいころからマリーナ河芸の存在は知っていて、「楽しそうでワクワクする場所」という印象を持っていました。そんな中、就職説明会で専務のお話を聞く機会があり、話してみると専務の娘さんとは同じ保育園の同級生で、父のこともよくご存じだったんです。専務からマリーナの魅力や、地元に貢献したいという想いを伺い、自分もこの会社で働きたいと思いました。
――現在はどのような業務を担当されていますか?
前畑:主に船外機の消耗品交換を中心に、ボートのメンテナンス業務を行っています。また、中古艇の再生業務にも取り組んでおり、外部の業者様との打合せの窓口も務めさせていただいております。中古艇の再生業務の際には当社の営業スタッフとも意見を交わしながら、より良いボートに生まれ変われるよう努めています。
※マリーナ河芸ではマリーナスタッフやメカニックなど幅広い職種に携わることができる。
入社後はまずメカニックとして船の基礎を学ぶ育成方針が取られることもあり、現場を知る経験がその後の提案や接客にも活かされている。
メカニックとして専門性の高さを実感
――実際に働いてみて、入社前とのギャップはありましたか?
前畑:外から見ると「楽しそう」という印象でしたが、実際には難しいことも多く、非常に専門的なことの多い仕事でした。同じ修理でも原因が異なり、船の構造やメーカーによって対応方法も変わります。自分が思っていたよりも、船の世界は想像以上に奥が深く、知れば知るほど新しい発見がありました。
――実際に働く中で、大変だったことはありますか?
前畑:正直に言えば、最初はすべてが大変でした(笑)。特に自分は船酔いしやすく、まずは船に乗る環境に慣れることからのスタートでした。それでも、人間は慣れるものですね。今では仕事中に船酔いすることはまったくありません。整備に関しても、最初は工具の使い方も分からず、何もかもが新しいことばかりでしたが、先輩方が常にそばで丁寧に指導してくださり、実際に手を動かしながら学ぶうちに、自分一人でも作業を任されるようになりました。ここは未経験でも安心して成長できる環境が整っていると感じます。
――仕事のやりがいを感じるのは、どんなときですか?
前畑:整備の現場は、同じトラブルが一つとしてありません。状況に応じて原因を見極め、常に最適な方法を考える必要があります。毎日が新しい挑戦で、その経験が確実に自分のスキルとして積み重なっていきます。修理を終えて、お客様から「安心して乗れる」と言っていただけた時に、大きな達成感を感じます。


新しい知識への挑戦
――今後、どんなことにチャレンジしていきたいと考えていますか?
前畑:会社も資格取得を支援してくれるので、今後は整備士として、必要な資格にもどんどんチャレンジし、スキルアップに繋げたいです。最近の船は電子制御化も進み、システムも複雑化しています。だからこそ、自分が若いうちに新しい知識や技術を積極的に吸収していきたいと思っています。


牛場 結衣さん(マリーナスタッフ/勤続5年半)

ボランティアで感じた雰囲気の良さがきっかけに
――マリーナ河芸に入社されたきっかけを教えてください。
牛場:当初は海に関わる仕事を志していたわけではありませんが、学生時代、マリーナで開催されていた「海のバリアフリーまつり」というイベントにボランティアとして参加したのが、この会社を知る最初のきっかけでした。ボランティアとして活動する中で、スタッフの方々がとても明るく、雰囲気の良い職場だと感じ、そのときに“こんな場所で働けたらいいな”と思い、入社を希望しました。
幅広い経験が今の自信につながる
――入社当初から現在まで、どのような仕事を担当されていますか?
牛場:現在は入社6年目となりますが、入社当初はレンタルボートの担当として、お客様への利用説明や出航サポートなどを行っていました。その後、会社が運営する子ども向けの自然体験教室を通じて海の魅力を伝える活動を担当し、その後はレストランや宿泊施設の業務も経験しました。この秋からはマリーナスタッフとして勤務予定で、オーナー様とのやりとりや桟橋でのサポート、イベント運営など、業務の幅はとても広いです。
――働き始めた頃に大変だったことはありますか?
牛場:基本的なことですが、電話対応が一番の壁でした。お問合せ内容はマリーナの施設に関することだけでなく、ボートの部品注文や修理のことなど、専門的なものも多く、最初は聞き慣れないカタカナ用語にとても戸惑いました。それでも、回数を重ねるうちに自然と慣れていき、今では自信を持って対応できるようになりました。分からないことはその場で確認し、先輩方がすぐにフォローしてくださったので、安心して知識を身につけることができました。

自分のアイデアを形にできる環境
――仕事のやりがいを感じるのは、どんなときですか?
牛場:自分が「やってみたい」と思ったことにどんどんチャレンジさせてもらえるところです。マリーナでは会議などでしっかりと意思を持って自分がやりたいことを伝えれば、積極的に挑戦させてもらえます。大規模なイベント企画や運営などもスタッフに任せてもらえるので、責任は大きいですが、そのぶん達成感も大きいです。上司の方々がきちんと意見を聞いてくださり、的確なアドバイスやフォローをしていただけるので、比較的若手でもやりたいことに挑戦しやすい職場だと思います。
お客様とのつながりが励みになる
――マリーナで働く中で、一番うれしかった瞬間を教えてください。
牛場:レンタルボートやレストランをご利用いただいたお客様から、「ありがとう」「また来ますね」と直接言っていただけたときが一番うれしいです。マリーナの事務所で色々なイベントや企画を考えていた時間が報われる瞬間です。現場でお客様と関われるからこそ、その声を直接聞けることがとても私自身の励みになります。日々の小さな「ありがとう」の積み重ねが、この仕事を続けたいと思う原動力です。

新しい挑戦を通して、より多くの人に海の楽しさを届けたい
――今後、チャレンジしていきたいことはありますか?
牛場:この秋からマリーナスタッフとして、多くのオーナー様をサポートさせていただく業務を担当します。まずはオーナー様と会話させていただき、オーナー様のことをもっと深く知り、自分自身のことも知っていただきたいと思っています。また、船の構造など、より専門的な理解も深めたいです。将来的には、クルージング企画や釣りイベントなどを通して、オーナー様が気軽に出航できるような環境づくりを進めたいと考えています。マリーナから海に出る楽しさをもっと広げていけたらうれしいですね。


鈴木 里菜さん(マリーナスタッフ/勤続3年)

海が好き。その気持ちが新しい挑戦の原動力に
――マリン業界に入ったきっかけを教えてください。
鈴木:入社前は店舗の内装設計やPOP制作の仕事をしていましたが、もともと海が好きで、趣味で船舶免許を取得していたことなどもあり、「いつか海に関わる仕事がしてみたい」と思うようになりました。船の世界は少し敷居が高い印象がありますが、マリーナで働けば海をより身近に感じられると思い、応募しました。
整備の基礎を学んだことが今に生きている
――入社してから現在まで、どのような業務を担当されていますか?
鈴木:入社後3か月間はメカニック部門で勤務し、船舶検査や消耗品の交換などを担当しました。
ボートは種類によって構造が異なり、消耗品の取り付け位置も違うため、覚えることが多く大変でしたが、その経験を通してボートの基礎知識をしっかりと身につけることができました。
現在はマリーナ河芸と、愛知県名古屋市にある「海蔵(うみくら)」でレンタルボート業務を担当しています。お客様への受付対応から出航前の準備、返却後の清掃から洗艇まで、レンタルボート業務全般を任されています。

――現在の仕事で、大変なことはありますか?また、特にやりがいを感じるのはどんな時ですか?
鈴木:基本的には外での作業が多いため、夏は暑く、冬は寒いという環境面の大変さはあります。
また、レンタルボートは5艇あり、予約が集中する繁忙期は常に動き回っています。
受付・清掃・洗艇といった一連の作業を一人でこなす必要があるため、体力や気力も求められますが、
お客様と直接関われることが何よりのやりがいです。初めて船に乗る方や、免許を取ったばかりのお客様が「思っていた以上に楽しかった」「また利用したい」と言ってくださると、本当にうれしくなります。現場でお客様の喜びを肌で感じられるのは、この仕事ならではの魅力だと思います。


新しい分野へ積極的にチャレンジ
――今後、挑戦してみたいことを教えてください。
鈴木:現在は週に数回名古屋の「海蔵」でも勤務しているのですが、今後は船の販売にも携わっていきたいと思っています。販売を通じて、より多くのお客様にボートの魅力を伝えられるようになりたいです。そのために、今はSNSを活用して情報発信にも力を入れています。インスタグラムを通じてマリーナやボートの楽しさを届け、「海に行ってみたい」「ボートを見てみたい」と思ってもらえるきっかけを作っていけたらと思っています。これからも積極的に新しいことに挑戦し、自分自身のスキルアップにつなげていきたいです。

マリーナで育つ、未来のマリンプロフェッショナルたち
マリーナ河芸で働く彼らの言葉から伝わってくるのは、海の仕事に向き合う真っすぐな姿勢と、現場を支える誇りだった。マリン業界は華やかな舞台の裏に確かな技術とチームワークが息づいており、ひとつひとつの経験が人を育てていく。その先にあるのは、海と人をつなぐ大きなやりがいだ。

取材協力:マリーナ河芸 三重県津市河芸町東千里854-3
TEL. 059-245-5001 定休日・毎週火曜日
URL: https://marina-kawage.co.jp


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